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ええっとですね・・・視力の分離はランベルト環(Cの字のあれです。正式には内径と外径、切れ目の幅の比率、さら測定時の明るさまでが規定されています。)で計測しますが、あの値と黒い点を目視できるかどうかは別問題です。
黒い背景に白い点の代表は「星」ですが、視直径はゼロコンマ・・・・秒です。でも見えますよね。この場合の見える見えないは「星の明るさ」と、「背景の黒とのコントラスト比」で大きく左右されます。視直径の大小の区別は付かなくとも「見えます」。
逆に白い背景に黒い点の場合には「背景の白がまぶしくない程度の明るさ」と「背景の白とのコントラスト比」に左右されます。太陽の黒点や、今回の金星はこのケースです。黒点は漆黒では無いので実際にはコントラスト比がそれほど高くはありません。でも金星の陰は漆黒です。コントラストは十分です。後は減光して太陽がまぶしくない程度まで輝度が落とせれば、視力表示で2〜4(角度表記なら0.5〜0.25分)程度なら十分視認できるはずです。まぶしい明るさだと黒の領域に光の回り込み(滲み出し?)が発生し、黒い点が視認できなくなります。このため、上記の「黒背景に白点」のケースよりも条件は厳しく、見えにくくなります。
金星の視直径1分程度という値はφ0.3mmのシャーペンの芯を1メートル先から見る程度の視直径です。紙の上に細いボールペンで点を打って見れば「目のよい人なら見えそうだ」と分かります。
余談ですが、視力測定に用いられるランベルト環による計測は白地に黒のCの字の切れ目の位置がわかるかどうかという計測法で、周囲の明るさの規定もあるものなので、2重星の分解(黒背景に白点。しかも夜間・・・)などの指標には使えません。このあたりは雑誌や天文学の先生の記述も間違っている事が多いので注意が必要です。(光学理論ではなく生理光学の世界ですので理解が乏しい・・・)
さらに2重星の分離の「ドーズの限界」と「レーリーリミット」も基準が異なります。「ドーズの限界」はドーズが「実際に観察に用いた望遠鏡」(理想的とは限らない)で、「実際の観測」(これも理想条件とは限らない)で、「彼の目」で観測して得た値から得られた「経験値」です。
一方でレーリーリミットは計算による理論値ですが、「重なった2つの山の間にできる谷間がどの程度の高さなら視認できるか?」という肝心な点はエイヤ!で決めたもので、第一回折環の重なりを基準で決めています。このため両者の値は異なるものとなっています。現実にはさらに「網膜面上での照度(暗いと解像力が落ちる)」と「背景とのコントラスト」も影響するので一義的に決まりません。
とまあ、「見える」「見えない」と言う問題は非常に面倒でややこしいものです。。。 |
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