実物星座早見盤
星をさわる道具]

 

 上の写真は、単に作業場の光景を、真ん中に穴の開いた変なガラスを通して写した普通の、何でもない写真のように思えますがそうではありません。

 

 適当な対物レンズを選んで、その焦点の位置にスリガラスを置くと向こうの景色が逆さに写るのが見えます。その景色は勿論両眼で楽に見る事が出来ます。これは別に不思議な事でもなんでもありません。単純明解に、誰がやってもそうなる物理現象です。

 

 一方、スリガラスの代わりに、所定の視界を確保する大きさのレンズを置いてもスリガラスの場合と同じような結果が得られてレンズ面に倒立した景色が写ります。---写る、というよりは、向こうの景色が焦点の位置に見える。---これが正しい表現でしょうか。

 そして又、条件を選べば、その像を両眼で楽々見えるように出来ます。

 

 その理屈に従って、対物レンズの焦点面に、丸いレンズと周囲にフレネルレンズを置いてスクリーン面とし、そのスクリーン面に結像した作業場の実像を、普通のカメラで写したのが上の写真です。勿論、正立像にするために光学ミラーを使って像をひっくり返しています。

 

 手前のスクリーン(四角のフレネルレンズの部分)の大きさは24cmX28cmです。本来はこの大きさをカバーするだけの大きいレンズが欲しいところですが、対角線で35cmを越えますのでとてもそんなレンズは手配する事が出来ません。従ってここでは四角のフレネルレンズで周辺部は我慢する事にして、その真ん中をくり抜いて鋭像用に10cmのレンズを嵌め込み一体にして広い視界を確保するようにしてみました。

 倍率は約1.2倍くらい、視界の広さは全体で60度近くはありそうです。

 スクリーンの大きさはテレビ画面換算では14インチ相当で、小さいようですが、テレビと違って、遠くから離れて見るわけではありませんので広さの迫力は充分あります。

 とにかく今回のこの像はスリガラスでの焦点面の像と同じように両眼でゆっくり見られると同時に、スリガラスの場合とは違ってレンズですから透明に抜けて見えるので、凝視すると実に不思議な光景を見ているような気持ちに襲われます。眼前にすぐそのままの景色が見えるのに加えて物凄い立体感が迫ってきます。

 上の写真ではフレネルレンズの周囲あたりがボケていますが、実際は眼に焦点深度があるので隅々まで抜けるようにはっきり見えます。

 とりあえず、スクリーンを上から見下ろすように固定し、ミラーのひとつをまわす事で、自由に空の位置を探り当てられるような簡単な経緯台を作り、実際の星空を眺めてみました。(実際の夜空ではフレネルレンズとガラスレンズでの像の善し悪しの差は考えた程大きく感じられません。倍率が低いせいかも知れません。)

 倍率は殆どゼロなので実際の星空がそのまま手元に届きます。本当の星空が眼のすぐ前に展開されるのです。勿論、両眼で楽々と見ることが出来ます。

 ここではスクリーン面に実像が結像しているので、任意の星の像を指で触る事が出来ます。又、無論ルーペで拡大する事も出来るわけです。「・・〇〇星はどこだどこだ..」と虚空を指差す事は必要ありません。代わりにスクリーン上の星を指差せばよい事になります。

 スクリーン面、といってもCCDカメラで写したモニター上の電子像と同じではありません。数千万の画素数を持つ電子カメラならいざ知らず、現在の電子像ではあたかも新聞写真のような感じがして、それを見て広大な宇宙に吸い込まれるような臨場感は到底得らないものです。

 やはりレンズを通して、星座を丸ごと取込み、ピカッと鋭く光る本当の星の姿を手にする構造でなければなりません。そこにこそこの星座盤作成の発想の原点があります。

 オマケに、像面がそのまま焦点位置ですから、そこにガラス(又はアクリル板でも)に描いたいろんな手描き情報を置く事ができます。又、ポインターを使って目的の星を簡単に指す事もできます。

 約20度あるオリオン座は真ん中のレンズに入る位の大きさでした。(わずかはみ出す程度かな。)

 そのオリオン座を捕らえて「オリオンの大星雲はここにあるのだ」と指差さし、それを虫メガネを使って拡大してじっくり見る事も可能です。(天体用アイピースで拡大する場合はアイピースの差し込みパイプを外して、視野絞りをスクリーンの上に接触させる形で置いて見ます。)  

 像に欠点があるとしたら、単純な構造とはいえ、これでも光学器械ですから、レンズによる光の反射吸収、及び、ミラーの反射率の関係で星々の光度がやや落ちるかな、と、それはあります。正直に申し上げておきます。

 

 ともあれ、新しい感覚で星を見る新しい時代の?新しい楽しさを味わう事が出来ます。それだけは間違いありません。 

 この仕掛けにはデジタル利用のハイテクは何もありません。ローテクノロジーで、いわばアナログ仕掛けみたいなものです。つまりガリレオ時代の考え方に立った原始的でかなり初歩的な道具に過ぎません。然し、いくら幼稚とは言え、ちゃんと見えればそれで結構だと思うのですがいかがでしょうか。

 天体観測では像を拡大しないと気が済まない気持ちは充分に理解できますが、今回発想の実物星座早見盤は[実際の星空のプラネタリュウム]だ、と考えてもよいかも知れません。

 とにかく、大きくても数倍ぐらいに倍率を抑えたしっかりした星空の実像を目の前に作り出して手元に置き、それを両眼で見つつその光景を時にはカメラに収める。そして必要に応じて要所要所を適度に倍率をかけて見たり------と、それを私共素人にとっては非常に便利な、使い勝手のよい、そして夢のある「星をさわる道具」の実現化だと決めてみました。

 

  

 

 

 「実物星座早見盤」のサンプル写真です。但し、製品化を念頭に置いたサンプルではありません。どのように見えるものか試してみようといった程度の作りです。

 本体の上部がスクリーンで、そのスクリーン部は多少上下に動かせるように改良してあります。そうした事でアイピースをそのままスクリーンに置いても拡大視出来るようになりました。(但し、目下のところ細工が不十分でなかなかスムースにはいきませんが。) 右側の、傾いていて内部が黒いボックスは、回転出来る作りになっておりこれで緯度の設定をやります。この箱の入口から斜め一杯に張ったミラーを通して星の光が入り込んで来ます。一方経度は、本体を左右に振る事でOKです。(本体はキャスター付きですから、経度設定はスムースに出来ます。)本体にも勿論ミラーが張ってあり受けた光をスクリーン面に届けそこに結像させる事になります。

 床下に置いてある四角の筒は紙で作ったフードで、必要によってスクリーンの上に置きます。(これにはかなり効果があります。)

 緑色の台車は実際には使いません。本体一式を地面に置く事で、スクリーンは椅子に座って見る位の高さになります。(台車の中の7倍50ミリの双眼鏡は大きさの比較のために置いてみたものです。)

 

 この種のモノには、とかくスマートな名前、例えば「スカイステーション」とか、その種の名称などがあるかと思いますが、姿形からして、スマートな製品化はなかなか難しいような気がします。工場による量的製品化の計画よりは、むしろ自作をお薦めしたい器材とも思うのですがいかがでしょうか。

 

 「実物星座早見盤」のサンプル写真です。但し、製品化を念頭に置いたサンプルではありません。どのように見えるものか試してみようといった程度の作りです。

 本体の上部がスクリーンで、そのスクリーン部は多少上下に動かせるように改良してあります。そうした事でアイピースをそのままスクリーンに置いても拡大視出来るようになりました。(但し、目下のところ細工が不十分でなかなかスムースにはいきませんが。) 右側の、傾いていて内部が黒いボックスは、回転出来る作りになっておりこれで緯度の設定をやります。この箱の入口から斜め一杯に張ったミラーを通して星の光が入り込んで来ます。一方経度は、本体を左右に振る事でOKです。(本体はキャスター付きですから、経度設定はスムースに出来ます。)本体にも勿論ミラーが張ってあり受けた光をスクリーン面に届けそこに結像させる事になります。

 床下に置いてある四角の筒は紙で作ったフードで、必要によってスクリーンの上に置きます。(これにはかなり効果があります。)

 緑色の台車は実際には使いません。本体一式を地面に置く事で、スクリーンは椅子に座って見る位の高さになります。(台車の中の7倍50ミリの双眼鏡は大きさの比較のために置いてみたものです。)

 

 この種のモノには、とかくスマートな名前、例えば「スカイステーション」とか、その種の名称などがあるかと思いますが、姿形からして、スマートな製品化はなかなか難しいような気がします。工場による量的製品化の計画よりは、むしろ自作をお薦めしたい器材とも思うのですがいかがでしょうか。



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