ライカのコピーカメラ「オーナー35」

 日本のカメラはドイツの真似からスタートしました。特に高級機の殆どはライカとコンタックスのコピーでした。ただ、カメラ生産が本格化するにつれ次第に日本独特のオリジナリテイが確立され、特徴ある立派なカメラが生まれるようになってきました。
 然し、なかには依然として猿真似から脱却出来ないメーカーも數多くあったのも事実です。オーナー(Honar)35はその典型かと思います。原形はライカでした。ライカの真似でないとしたら随分立派なカメラだと思うのですが、ライカ3-Cか、とにかくそれとそっくりに作られていました。そんなカメラが飛ぶように売れた時代もあったのです。

 然し、猿真似だけでは売れなくなる時代はすぐやってきました。
 オーナー35のメーカーは時代の流れから取り残され間もなく潰れたのです。オーナー35という名もないカメラを知る者は残された当時の従業員以外誰もいないのではないかと思います。記録や資料も何一つ残されていないようです。

 そのオーナー35の残部品が元従業員から数台分ビクセン光学に集められ、それをもとに再現に成功したのが上の写真です。再現されたのは二台、一台は組立屋さんに記念として差し上げ、一台はビクセン光学に残されました。元従業員で今だに持っている人もおられるでしょうが、天下晴れて陳列ケースに鎮座しているのはビクセン光学の一台だけとなります。

 但し、再現に成功したと云ってもシャッター幕に不具合箇所があり撮影はすぐ思うようにいかなくなくなり、従って、残念ながら往時の元気さはありません。

 戦後急速に成長したカメラ産業の中で誰にも認められずひっそりと消え去っていったコピーのカメラ、それがオーナー35でした。



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