昔のオペラグラス-E

 4 x40ミリのオペラグラス(ローデンストック)
 
このオペラグラスは、一目見ただけで現代風の作りだと分りました。多分、戦事中の製品だと思われます。前述の各製品と違う点は、まず、全体の構造が単純な外観で、それと頑丈に出来ている事。加えて色彩が暗い事など、これらからこの製品は軍事用に作られたからだと考えられます。
 この製品では、中心軸を上下させてピントを合わせる方式には変わりはありませんが、これまでのように長くなるのを防ぐため、僅かな作動距離を動かして近距離から遠距離まで見られるように、対物レンズの焦点距離を可能な限り短くしてあります。勿論それに合わせて接眼レンズの焦点距離も詰めています。中心軸は鏡体の中に内蔵され転輪は対物側に移り、ハネは中心軸同様中に入り、従ってムキ出しの接眼部の構造は外からは見えません。動きが見えるのは接眼外筒部だけです。飾りに等しいような無用のモノはこの製品では一切ありません。従来品から見ると格段に優れた設計になっています。------但し、軍事用なので、この風体ではオペラ観劇には使えませんね。
 これらの仕様が可能になったのは一つにはレンズ設計がレベルアップした事、それと金属加工技術に長足の進歩があったためと思います。
 これによって全体の大きさも前述の製品とは比較にならぬ程小型化され、万事につけ機動性と機能性が増大したというわけでしょう。その後、戦後から現在に至るオペラグラスの系譜はすべてこの設計を踏襲した形で進んできています。

 対物レンズのf 値は推測では 1.5 に近い数値だと思いました。これによって光軸調整は多少楽になった筈です。焦点距離が短ければ光軸の移動による狂いは少なくなります。
 その調整はどうやってやったか?。(これまでの いずれの機種でもはっきりした調整方法は不明でした。)接眼レンズで行われていた様子はありません。対物レンズではどうか。
 試みに、対物キャップうを外してみると、レンズの入っているレンズ室が油を介して空転する事が分りました。これで解決です。このレンズ室を回すことで、確実に光軸が取れたのです。因に、最初に覗いてみたところ狂っているのが認められたので、その場で対物レンズ室を回し簡単に光軸の調整が出来ました。当時もこの方法で理屈通りにスピーデイに作業が進んだと思います。

 エボナイトで出来ている転輪の裏には made in Germany と刻印されてありました。両接眼レンズの中間、本体の上面にも刻印があるのが分りますが、この方は はっきりしません。ケースの蓋の裏にはG Rodenstock とあり、続いて多分 ミュンヘン と読める文字が続いていました。

 Rodenstockは今でも有名なメガネのメーカーです。巨大な会社です。
 ローデンストックは現在どのような会社になっているのかサイトを検索してみたところ、ぞろぞろと出て来ました。然し、とてもすべては掲載出来ません。従業員数 6712人(1999年)この数字だけを載せておきます。大会社だというのがお分りでしょう。
 メガネの巨大メーカーもかってはこのようなオペラグラスを作っていた時代があったのです。然し、さすが由緒あるメーカーだけに製品は完璧です。



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