ドイツの変な双眼鏡-2

 接眼レンズのレンズ間隔を変える事で倍率を変更する式の双眼鏡のようです。現在はズーム式のレンズを使えば簡単に倍率を変更出来ますが、当時は筆算によってレンズ設計を行ったのでしょうから、ズームレンズの設計などとは途方もない高望みだった事でしょう。
 それにしても、よくも恥ずかしくないもんだ、と呆れ返るほどのデザインです。中心軸を多重構造にする事で上下の作動距離を稼いだのでしょうが、よくやるよ---と、申すほかありません。作りはしっかりしていたと思うのですが不安定さを呼び起こすようなデザインでみっともない事には違いありませんね。

 一つの 対物レンズから入る光を二つに分けて両眼で見る---この方式は「単対物双眼鏡」の名で呼ばれて日本でも最近まで何種類かの製品が出されました。ただ、いろんな問題を抱えている関係で継続して量産されるまでには育っていません。
 上の写真は、その元祖みたいな機種です。現在までに手掛けられた機種と違うのは、対物からの光を文字通り半分にして分割している点です。現在ではその方式は取らず、プリズム面をハーフミラーにする事によって分割する方式を採用しています。物理的にはどちらでも同じような感じがしますが、上記の方式だと、ヒトミ像がちょうど半円状になるので、覗く段階でなんとはなしに違和感を覚えるものです。加えて、両眼の間隔に合わせるべく双眼鏡には眼幅調整装置が必要とされているわけですが、これが上記の半分方式ではうまくいかないという欠点が生じてしまいます。(詳しい説明は省略しますが。)

 ただ、上の写真ではっきりしない点があって、それは、もしかしたら対物レンズは大きなレンズ一枚ではなくして、半分切った形で、両方別々の軸を持っているのではないか・・・とも思える点です。もしそうだとしたら、不思議なレンズ構成になります。一度覗いてみたい気がします。然し、それにしても、大変なコストをかけて開発する必要がどこにあったのか、その点が現在なら問題になるでしょうね。

 デザインが全くいただけない双眼鏡です。丸みを帯びたデザインは誰でもが考えると思うのですが、機械加工が大変です。基準にする箇所にカーブがついてあると加工が出来ません。どうしたのでしょうか。それと、何よりも見かけが良くありません。加えて、そのデザインに纏める必然性が見当たらない事です。現在ではプラスチック等の可塑性材料ぐぁいくらでもあるので、自由なフオルムを選択出来ますが、往年は事情は違っていました。従って選択したその形状にはムリがありました。

 下の写真の、角張ったデザインはどうか。これなら丸みがないので許されるのではないか、と思われますが、これもダメです。一見ブリキ細工にしか見えません。それと、このデザインにまとめ上げるとなると、中のプリズムに特殊な形状のプリズムが必要になる---これが決定的な問題点になります。デザインに固執したため(それもオモチャ的デザインに)内部構造が高価になったのではどうにもなりませんね。

 とはいえ、これらの無細工?な双眼鏡が飽きず懲りずドイツの文献に載っている事はそれだけ開発期にかけた旺盛な意欲が感じられる、と云う事でもあります。ドイツでは上記の変な双眼鏡に見られるように、大変なカネとムダと時間をかけて開発を推し進めて来た筈です。それらのドイツが開発した結果のみを頂戴して生産が出来た日本は、その分、いかにも底が浅いのだ、と申すほかありません。これは双眼鏡に限らずあらゆる面で後進国だった日本が負った宿命的弱さだと思います。



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