正体が不明のオペラグラス-2

 上の上の写真は、文献などによく出て来る典型的な小型望遠鏡です。作りは立派。伸縮式の鏡筒の精度もキッチリ決まっています。デザインも素敵。性能もまあ完全です。対物レンズ側の白い模様は正真正銘の貝貼り細工で実に丁寧に仕上がっていて気持ちのよい感触でした。
 文句のつけようがありません。もし文句があるとしたら、この製品は相当に高価な製品であったに違いない---これだけです。
 因に、この製品はハンガリーで「ビクセン光学博物館」用として購入してきたものです。対物口径は25ミリ、倍率は約2倍です。刻印は全くないのでメーカーその他は一切不明です。参考までに購入価格は日本円で 4万5千円でした。現在でも相当に高価です。

 

 上の下の製品は、対物レンズ40ミリの堂々たるオペラグラスです。このモデルによく似た製品は今でも内外のカタログなどでよく見かけます。定番と言うべきスタイルだと言う事でしょうか。
 然し、一見この製品は標準スタイルのような形ですが、大きく違っている箇所があります。それは、写真の接眼部の右に見えるツマミです。
このツマミを回すと、なんと倍率が変わるのです。勿論左側の接眼部に連係して動きますから、理屈通りの動きで問題はありません。
 よくぞやってくれた!、と、感動しましたが、やはり問題はあります。大いにあります。

 通常、この種の変倍装置では、変倍ドラムに小さなガリレオタイプのアホーカル光学系を挿入して、それを回転させて2種類の倍率を得るようにしてあります。もし、もっと多くの変倍を行いたい場合は、十字のドラムを作りその回転によって4種類の倍率が得られるようにした複雑な機種もあります。然し、この製品では、なんと!六角形のドラムの中にそれぞれ望遠系のレンズを入れて6種類の変倍が利くように工夫されてあります。まあ、それでも我慢しますが、もっと大きい問題は各レンズ系が望遠系でアホーカル系ではない、という事です。従って、各倍率ごとにそれぞれピントを合わせ直さないと見る事が出来ないのです。6種類の倍率をそれぞれ合わせ直すのですから、接眼部は大きく伸びて、最終的には高さが倍くらいまで高くなります。その時の倍率は何倍か正確には判りませんが、高すぎる倍率のため視界は極端に狭くなっています。又、長年の経年のため光軸は完全に狂っているのですが、その場合、誰が、どうやって再調整するのか、軸出し作業は煩雑すぎて現在ではやれる人間は皆無だと思われます。
 このオペラグラスは最大の「傑作」であると同時に最大の「愚作」だと申し上げても構わないでしょう。そんな製品でした。
 例によって、この製品にも刻印はありません。従ってどこの国の製品かも判りませんでした。



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