昔の望遠鏡-4
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地上望遠鏡の源流に位置する機構ーーー


この望遠鏡は、像が正立なので地上用に作られている事が分かります。但し、鏡筒と架台部が別々の製品で、後年ドッキングされたものです。鏡筒バンドが手作りで、鏡筒台座と鏡筒の合わせ面のカーブが違っているので分かりました。
 面白い望遠鏡です。

 対物レンズ有効径は約47ミリ、焦点距離は推測で600ミリ位、アクロマートです。コートはしてありません。従ってかなり古い製品だと思う反面、レンズ類は「かしめ固定式」ではなく、現在行われているような「押さえ環式」のようなので、思うほど古い製品ではなさそうです。
 正立像を成立させるには、そのため余分のレンズを必要とするので、接眼レンズ部はかなり長くなり、この望遠鏡のドローチューブは引き抜いてみると、約400ミリもあります。無限位置でピントを合わせるのにドローチューブを出し入れして鏡筒端面から300ミリ程度の位置でピントが合います。いかにも長いという感じです。
 長いドローチューブの引き出しにガタが出ないように、接眼部の内部がダブルパイプになっており、内側のパイプに3箇所の切り込みが入れてありバネを利かしてガタを防いであります。ご立派です。確かに出し入れのガタは全くありません。スウーと気持ちよく出し入れが出来ます。

 ドローチューブはそのまま接眼部のドローチューブに入っています。つまりドローチューブは二重で出し入れ出来るようになっています。
 接眼部のドローチューブには出し入れ用にラックピニオンが付いているのですが、残念ながら上の写真では裏側になって見えません。丸いツマミを回すと前後に動く仕掛けで、現在はどの望遠鏡にも装着されてあるので珍しくはありません。ただ、ここでは通常の方法とは違って、妙な仕掛けで動く方式がとられています。(図で説明すれば簡単なのですが、)何故そんな方式を採用したか、その理由は分かりません。現在と違って、決められた方式の無い時代だったので方式にこだわる理由はなかったーーー単純にそうなのかも知れませんね。現在、全く見かけない式なのでチョー珍しく新鮮に見えます。
 もう一つ、接眼レンズの先端に仕掛けがあって、小さなツマミを回すとシャッターが出てきてレンズを覆うようになっているのです。以前安物のカメラに見かけたギロチンシャッターと思えば間違いありません。笑いを引き起こす仕掛けです。
 その分、対物レンズにも立派な金属製のキャップがついています。ホントに立派なモノです。

 見え味は万全です。問題はありません。倍率は5〜8倍程度、視界の広さは目見当で30度くらい。景色等の観望には十分の能力を備えています。

 架台部は、乗せてある望遠鏡とは違っていると前述しましたが、この架台部は望遠鏡よりは、はるかに立派で頑丈です。年代もかなり古く、推測では望遠鏡が発明された初期の頃、1600年代、その時代の印象を受けます。
 全体は真鍮で作られているのですが、クリアラッカーのような塗料で表面が塗られてあります。保護のためかどうか、目的は分かりません。大部分は剥げ落ちて無惨な風貌です。然し、それだけ貫禄充分で重量感があります。なにせデザインがクラシックで中世寺院によくある燭台を思わせるスタイルです。とにかく古いイメージで大昔のモノである事は間違いありません。
 三脚は折り畳み式で、持ち運びに便利な作りです。柱筒の下端の鋭い三角形の石突?は何を想定して鋭利にしてあるのか、何かの目的があっての作りだと思いますが分かりませんね。
 構造そのものについては別に特徴はありません。現在広く見られるこの式の架台のオリジナルデザインなので、文句をつける筋合いはないわけです。ご立派としか申し上げられません。
 刻印はありません。従ってどこの国で作られた製品なのか不明です。察するところイタリアかフランスかな、と思うのですが確かではありまあせん。

 望遠鏡と架台が別々だと云っても組み合わせには不自然さがなく、これで十分です。組み合わせに問題はありません。このクラスに近いそれぞれの器械が最初から組み合わせられていたと想像されるので、いずれにせよ、かなり評判がよく売れた製品であったと思います。



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