昔の望遠鏡-・

 この望遠鏡の細長い台座の前半分には細かな目盛が刻まれてあります。一見、対数目盛のようにも見えるのですがはっきりしません。目盛はミリ単位。台座自体の片側はテーパーになっているので、多分どこかのアリ溝にスライドされて機能するようになっているものと推測されます。右下の横長の部分は水準器です。然し、それで一体何を測定するための望遠鏡か分りません。
 台座の長さは500ミリ、台座板の厚さが4ミリ、幅45ミリ、望遠鏡の鏡筒長は縮めた状態で305ミリ、対物レンズの有効径は28ミリ(推測レンズ外径は30ミリ)----そんなところです。
 寸法がミリ単位で測れるので、この製品は多分フランス製ではないかと思うのですがどうでしょうか。イギリスやアメリカとなると単位はインチな筈です。(インチ目盛では半端なミリ数字になります。)なお、製品には国名やメーカーの刻印はありません。

 対物レンズにはコートはありません。従って戦前の製品である事は確かです。接眼レンズの元玉(アイレンズ)の径は2ミリ程の小さなレンズ。アイリリーフが短いのでハイゲンの筈です。倍率は推測では3〜5倍程度の倒立像。視界は数度の狭視界です。こんな狭い視界なので、どこかの狭い一箇所を狙うための設計なのかも知れません。像は鮮明です。
 全体にピカピカとした真鍮製の精密な仕上げですが、中心部の角度表示の半丸の部材の裏側は荒っぽい仕上げで、機能本位の作りになっているのが読み取れます。その他の要所々の部品類はキチンと作られていますが、全体的に傑作と言える程の製品ではありません。

 製作年代はレンズにコートがありませんので、戦前だと云う事は分るのですが、然し、使用目的の手がかりが無いので、正確にはどうにも掴めません。困りましたね。

 望遠鏡本体を前後に正確にスライドさせ、そして角度を綿密に計る、となったら何を測定対象物と考えればよいのだろうか?。ホントに分りません。特に、台座を前後にスライドさせる----ここが不明です。眼視では、レンズの焦点深度と観測者の視力が邪魔をして、ピントいかんで、近くの対象物までの距離目盛は常に変幻します。加えて、基準点を距離方向にスライドさせたのでは変幻するフクターが更に増えて、余計に正確な距離の測定は不可能になります。又、角度目盛も精緻に刻まれているものの、それに対応すべき視界にはクロスヘアは張られてありません。

 然し、間違いなしに何かを測定したのは事実です。それは分りますが、測量器のように固定して測定する場合とは違っているので、想定も解釈も厄介でつかみどころがありません。

 いずれにしても、この望遠鏡は何かの測定装置の一部です。従って、それ以上の考察についてはギブアップですね。申し訳なし----です。



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