210ミリ径巨大テレセントリックレンズ
・の写真 有効径210ミリ、2群4枚構成の巨大レンズを作製しました。目的はテレセントリック用です。目下のところはレンズのみで、鏡筒その他の金物関係部品及び接眼部一式はこれからになります。使用目的によって金物構造もかなり違ってくるので待機中といったところです。
・の写真
210ミリ径レンズとなると、レンズとしては最大径に近い大きです。このクラスになるとレンズの芯出し加工が出来ませんので、凹凸それぞれのレンズを別個のレンズ枠に入れてロンキーテストをやりながら微調整ネジを使ってレンズ枠を動かし光軸を取ります。光軸を取るだけで丸一日かかる場合もまれではありません。
本来であればこのクラスのレンズは恒温室に横位置に置いて使用すべきなのでしょうが、天体望遠鏡の場合もさる事ながら、この場合のテレセントリックの場合もどうしても縦位置、そして常温の現場使用となるので、イヤな扱いになりますが、仕方がありませんね。
なお現物にはかなり慎重に行ったマルチコートがかけてあります。
そばの7倍50ミリ双眼鏡は大きさの比較に置いたもので巨大な大きさを実感してみて下さい。
・の写真
・の写真はテレセントリックのテストを行うための設置です、レンズの向こうにはにわか作りの接眼部とそれを装着したCCDカメラ、レンズの手前には30度ほど傾けて置いたダンボール箱に、手近にあった方眼紙を、表紙を上にして置いてあります。
右上に半分だけ写っているのはモニターテレビ。レンズの隣の1.5リットルのペットボトルは大きさの比較のためで意味はありません。
・の写真
まず最初に、巨大テレセントリックレンズとは全く無関係に、方眼紙をデジカメで写してみました。それが・の写真です。単に写しただけですから手前が幅広く、向こうは幅せまく写ります。又、手前にピントを合わせたのではっきり写っていますが、向こうの方はピンボケに写っています。これらすべては当たり前の写真で、変な点は何もありません。
・の写真
・の写真と同じように、30度程傾けた条件で、テレセントリックレンズで写したモニター上の方眼紙の表紙が・の写真です。
あーら不思議。デジカメでの写真とは全く違っています。まず遠近感が全くありません。そして表紙の模様はキッチリと平行模様として映っています。更にピンボケはゼロ。このような写真を写すためにこそ考えられたのがテレセントリックレンズなのです。
本来なら画素数200万画素くらいの1インチCCDカメラ、モニターは1.125本のハイビジョン。それらの高度な器材を使ってテストを行えば完璧なのですが、モニター上の像がイマイチなのは今回はCCDカメラが1/4インチカラカラー、画素数25万画素、モニターは普通のテレビ。その程度の器材で、なおかつ天井の蛍光灯が映ってモニター上の画質はよくないようですが、それでも然し、現物の見えはバッチリでした。
このようなテレセントリックレンズはどんな場合に使用されるのか?。
例えば、数百本の細いパイプを束ねたような部材で、それぞれのパイプの中に詰まったゴミの有無などを検査する時はどうしますか?。一本一本眼で見ながら検査していたのではたまったものではありません。---それなら普通のCCDカメラを使ったらどうなります?。遠近が逆末広がりになって、向こうまで全体が一緒に透けて見えないのでダメです、更に、向こうがピンボケでは到底使えないのです。つまり一望して識別するとなると、どうしても丸ごと全パイプ平行してピンボケ無しに画面に取り込めないとダメなのです。
モニター上にはバックライトにしたハニカム状の全体像の中に、光を通さないゴミで詰まったパイプのみ黒い点で出て来て始めて検査OKとなります。それも一瞬にして識別が可能となるのです。
そんな時こそテレセントリックレンズにお任せ下さい。遠近のない平行像でピンボケもない丸ごと像をモニターで見れば一望のもとに状況が正確に把握出来ます。検査現場での能率は数千倍!!にアップします。
ただ、問題があるとしたら、検査を必要とする被検体と同じ大きさ以上のレンズが必要になると云う事。従って、この210ミリ径レンズではギリギリで200ミリ径以下の被検体の検査が出来るという事です。
私共がこのようなレンズを研磨し製品化出来るのは、私共が天体望遠鏡の工場である事によるものです。従って巨大レンズと云っても別に特別の抵抗感はありません。
------だからと申して、その気になったらヤーキース天文台にある102cmの対物レンズを超えるモノが出来るかって?・・・。それは当然ながらムリと申す事でしょうね。