ケンコーで元気な時代の経緯台
ケンコー KA型 KDS型 経緯台
ケンコーの1980年前後(70年代後半〜80年代前半)は、最も元気な時代だったと思います。
次々繰り出される小型望遠鏡、赤道儀はバーニア目盛り付きのKE型(細身でかっこいい)、デブったシステム型KES赤道儀。
JSOの製品も取り扱い始め、当時は最も注目すべき小型望遠鏡メーカーでなかったかと思います。
その時代に登場した経緯台KA型/KDS型も実に意欲的な小型経緯台でした。手元に何台か集まりましたのでご紹介いたします。

80年代のケンコー製経緯台
 デザインが意欲的だと思います。当時ビクセンのカスタム型、ミザールのアルコア型、五藤のテレパック、ユニトロンなど、フォーク型でない微動付き経緯台がすでにありましたが、ケンコーはムーンライト型に象徴されるようなフォーク型しかありませんでした。それらをまねするではなく、ケンコーオリジナルのデザインが新鮮でした。
  ということで当時からたいへん興味がありましたが、周りになかったこともあり、さわった事がありませんでした。今回、手に入れて使ってみました。予想以上のもので、みなさんにも是非お勧めしたいと思う製品でした。
KA型経緯台 KDS型経緯台 (KE型赤道儀)

KA型経緯台

 KA-607はD=60mmFl=700mm(左写真)、KA-608はFl=800mm、KA-609という焦点距離900mmのモデルもあったようです。後に水平微動のハンドルがフレキシブルタイプになり、KA609Dというのも出たようです。

 何と言っても特徴は上下支持微動棒の付き方です。
垂直中心軸上センターの位置、また支点と作用点の距離を離して、実効的にブレを最も少なくしたい接眼部近くに取り付けるという天晴れな設計です。
個人的には小型廉価経緯台では最高のデザインと思います。
実際使ってみても、重量のわりに凄く安定しております。クランプを緩めた上下動もフニャフニャ感もなくスムーズに動きます。
 ただ、水平はタンジェントスクリュー型の一般的なもの。クランプを外して横に回した時少しねじれを感じますが、それもこの小型軽量にしては愛嬌レベル。実によくできた架台です。


 見え方は微妙です。若干高倍率でカートンに負けるようです。可もなく不可もなくのレベルと思います
 架台について
 昔から、どうやったら振動に強い架台になるかと古今東西で考えられていたようで、外国製の中には筒先、接眼部にステーを入れるものが多かったようです。ごく合理的ではありますが、方向を変える時支障が出やすいものです。
 下の左側の望遠鏡は初め、保管する時のみああやってるのかと思っておりましたが、ほかの文献からも、使用状態でああなっているようです。棒が伸縮するようです。
 中央のは赤道儀式なのに先をステーで押さえております。スライド機構があるようです。右の写真は、我らが五藤製作所のもので、最も似たタイプです。ハーフピラー状の延長軸をうまく利用しております。


 話は横道ですが、レースにでるバイクのハンドルの振動も凄いものです。私も若いときはサーキットによく走りに行って、草レースにも出たりしておりました。私のバイク(当時は750S刀)も振動がひどく、手首の感覚がなくなるほどでした。対策としてハンドルに付けるオイルダンパーを売っておりましたが、買えなかったので、ハンドルのグリップエンドにバランサー(錘)を入れちょっとマシになりました。ドアマンみたいなダンパー機構を望遠鏡に取り付ければスムーズになるのではと思ったりして・・・
古い本から見つけたもの イギリス製赤道儀 五藤光学教育用望遠鏡(6cmFl=1200mm)

KDS型経緯台 

 KA経緯台を褒めていて、このタイプ。実はあまり期待しておりませんでした。でも使ってみて予想外のスムーズさにちょっとびっくりしました。遊びもほとんどありません。私のEM-100より少ないです。
83年ケンコー6cm経緯台はなんと4種類。その最高モデルです。定価48500円もします。
 私のはKDS-609 Fl=900mmのモデルです。光学系は、見えるんですがなぜか高倍率でコントラストが低下気味です。先日、後藤の古い6cmと見え方比べ、低倍は逆にクリアなんですが、木星の模様は五藤のほうがはっきりしておりました。ただ、けっして悪くはありません。

架台だけですが、まったく同じものをも一つ持っております。JSOにOEMしていたものです。
 架台の構造
  汎用性を狙って、鏡筒バンド仕様にすると、ブランコフォーク型にするか、そうでないと鏡筒の重心とオフセットさせないといけません。後者の場合、モーメント(オフセット量)とフリクションの関係が微妙です。
KDS経緯台は上下、水平ともウォーム微動です。同じような機構のものに、カートンのTA経緯台、今も売っているミザールのK型経緯台があります。
TA経緯台は別格ですが、手持ちのミザールK型に比べてはるかに剛性があり、強力です。Nikon8cmにも付いていないウォーム軸の調整機能もあります。これは偏芯したウォーム軸受けを位置を合わせ止めるだけですが、これがあるために遊びが少ない架台ができていると思います。五藤の合焦機構に同じような機構があります。


右は、最近話題のNew KDSマウントです。こちらも悪くないようです。
その他 (共通)
 三脚も良いです。KA型は丸足です。塗りもいいです。KDS型は普通の□□□型ですが、重量級で塗りはもっと良いです。 ファインダーは最低レベル。5×25です。アクロ&ラムスデン。視野角30度くらいです。ただ、ファインダー側に十字線があり(塗りが無い)、一応アイピースのネジで十字線の合焦、対物レンズもピントを合わせれるようになっております。