見逃すなかれ、廉価望遠鏡のルーツ
カートン DEUS 1A   (4cm屈折経緯台)
 カートンお得意のスペース型赤道儀のモデルが出る前の1960年代は、アマチュア向け望遠鏡のラインナップがやっと揃ってきた時代。
1960年代前半の屈折望遠鏡でしたら日本光学、五藤光学、アストロ光学以外は明確なオリジナリティが無かったように思えますが、実は1960年代後半からの繁栄のさきがけととして、3社以外の望遠鏡に工夫のある望遠鏡が出始めました。
 子供がお年玉を貯めて買える望遠鏡として、このDEUS1A型もその役割を背負って産まれた1台と思っております。
2009.05.03
DEUS1A型4cm屈折経緯台  D=40mm Fl=800mm

 1965年のカタログには40mm経緯台は3種類ありました。1C型はラック&ピニオン接眼部、スライド式三脚、天頂プリズム付きですが、接眼レンズはいまいちです。1Aと1Bの違いは良く分りません。1Bは木箱でもついていたのでしょうか?
アマチュア、特に子供達が買える望遠鏡としては40mm経緯台がもてはやされた時代です。

木製三脚台座&経緯台

チープな作りですが、自作望遠鏡をみるような手作り感抜群です。金属製架台に対して塩ビパイプで受けているところも興味深いです。
ただ、水平ロックの蝶ナットは力を入れてはいけません(必要も無いですが・)。
また、三脚を止めるねじくぎは長さ30mm程あり、心配な構造ではありますが、軽量鏡筒に対しては十分な作りです。ラワン材が豊富な時代です。但し、一度組み立てると分解したくない・・というか、箱に入れるために何回も分解、組立はできません。小さなマイナスドライバーが付属しておりました。

対物レンズ

見え方は、F20の割に色収差が確認でき、コントラストもなく、こんなものかと。アイピースを付属するものからNikonのものに変えてみると、格段に良くなりましたが、それでも本来のスペックどおりの性能はでていないと思われました。
ひょっとしてシングルレンズ?と思って、対物側から覗いてみたら、あまりにもクリアー。反射が見えなかったので確認の為、分解したら、一応2枚玉、但しクラウングラスは青板ガラスです。これは、以前分解したキング商会の望遠鏡も同じです(セルは違っていたが)。当時の40mm、Fl=800mmの廉価レンズは、同じところが作っていたのかもしれません。
ただこの値段で、月のクレータが見え、土星の輪が確認できるこの望遠鏡は、子供達に夢を与えるに最低限の性能は備えた貴重な存在であったように思えます。

アイピース&フォーカサー
アイピースはH-9mmとH18mm、レンズよりはるかに絞りが小さく、視野角そんをしている仕様であるが、値段相応です。サングラスはPL法はるか前に死滅したかぶせ式。
装着には、念には念に入れてのチェックが必要です。
 接眼部がまた、特徴的。単純な擦動式ではありません。押し引きするとカタカタといいながら、不連続に動きますが、そこで回すと回転ヘリコイド式に回りながら、前後します。
突き詰めると、それなりな機能を示すとは思いますが、残念ながら天頂プリズムはちょっと使いにくいです。まあ、このモデルには付いていないのですが・・
仕舞い姿
コンパクトな仕舞い姿。重量はコミコミ2.5kg